インタビュー第1弾

「最後の職場」に箱根を選んで本当によかった。

ススキの原一の湯 名越さん

箱根の絶景スポットとして知られるススキの原から最も近い温泉宿、一の湯。
ここで名越さんはレストランのお仕事に携わっています。
これまでさまざまなサービス業の経験を重ね、酸いも甘いも噛み分けてきた名越さんが、70歳を過ぎて箱根を最後の職場に選んだ理由を語っていただきました。

サービス業を愛し、極めてきた

私は静岡県御殿場市で生まれ育ち、初めての職場は大阪梅田のホテルでした。そこでサービス業のなんたるかをゼロから叩き込まれ、修行を積みました。地元に戻って来てからも、この業界一筋です。今はまた御殿場に住んでいますが、昔は親の仕事の関係で箱根に30年ほど住んでいたこともあり、私にとっては第二の故郷なんですよ。


年齢を重ねてもなおサービス業が好きな気持ちは変わらず、一生携わっていたいと思っていましたが、前の職場はどうにも馴染めないところがありまして。70代になり、最後の職場は自分が心から愛せるところにしたいという思いが強まっていた時にご縁があったのが、一の湯でした。

「名越さん、辞めないで」

 
勤め始めたばかりの頃、少しはりきりすぎたのか腰を傷めてしまいました。しばらく我慢していたら悪化し、仕事を休まなくてはならなくなったのです。大好きな仕事だけれど、自分のせいで迷惑をかけるわけにはいかない。そう思って退職の意志を申し出ました。
すると副支配人が、思いもよらない言葉をかけてくれたのです。「名越さん、そんなこと言わないで、辞めないでくださいよ」と。私の罪悪感もそう簡単には消えませんでしたが「名越さんにいてほしいんです」「体を大事にしながらでいいから」と何度も何度も。もうね、負けましたよ、その熱意にね。そこまで言っていただいたのだから、せめて働いている間は精いっぱい恩返しをしたいんです。そうしなければ、男がすたるじゃないですか。
ちなみに腰は順調に回復し、今は絶好調!「腰は大丈夫ですか?」と職場の皆さんが気を遣ってくれるのですが、傷めたことを私自身が忘れているくらいです。無遅刻無欠席で楽しく働き続けています。
 
 

やっぱり健康がいちばん!

私はレストランでサービスを担当しているので、お客様がチェックアウトするタイミングでお見送りに行けないこともあります。そんな私に支配人が「さっきのお客様、とても喜んでいらっしゃいました」「名越さんのことを褒めていましたよ」などと教えてくれるんです。そうしたお客様の声も、支配人の気遣いも、私にとって大きな原動力になっています。


長年サービス業を経験してきましたが、一番大事なのはやっぱりお客様に喜んでいただくこと。そのためには自分が健康に働き続けられる環境が必要不可欠です。今は1日5時間で週4日という自分にとってベストな働き方をさせていただいています。昔は、現代では考えられないほどハードな職場もありました。鍛えてもらったことには感謝していますが、今がいちばん自分らしく働けています。

箱根に行ける、それが喜び

箱根の夏は涼しくて、クーラーをつけなくてもいいくらいです。特に朝晩は快適で、元気な犬3匹と散歩に出かけて帰ってきてもまったく汗をかいていないほどなんですよ。豊かな自然に囲まれた、なんとも気持ち良い環境です。そしてやっぱり、従業員は温泉に入り放題なのが箱根温泉で働く醍醐味ですよね。
さすがにこの歳になると、仕事が終わって家に帰るとバタンキューです。でもね、若い頃と違って今は、夜寝るのが楽しみなんですよ。なぜかって、朝起きたらまた仕事に行けるから。4時には起きて、身だしなみを整えて、箱根に向かう。これが今の私の人生の喜びです。