この町で生きてきた全てが、お客様の笑顔につながる。
箱根町総合観光案内所 野沢さん
日本有数の観光地である箱根の玄関口、箱根湯本駅のすぐ目の前に位置する箱根町総合観光案内所。ここで働いているのが、箱根で生まれ育った野沢さんです。
一度は地元を離れようと考えた野沢さんが箱根に根を下ろした理由、観光案内という仕事の経験を重ねて見えてきたことを話していただきました。
「地元」の安心感に誘われて
箱根で生まれ育った私にとって、周りの大人たちが観光業に携わっているのは当たり前の光景でした。自分もいつかそういう仕事をするのかなと漠然と思っていましたが、やっぱり一度は箱根を離れてみようと東京の学校に進み、東京で就職活動。しかしなかなかうまくいかず少し疲れていたところに連絡をくれたのが、箱根町観光協会に勤める知人でした。
「地元で働いてみない?」それは東京で就職しようとしていた私の方向性とは真逆の提案でしたが「地元」という言葉に不思議と安心感を覚えている自分に気付いて。地元の人が地元で働く、それっていいことだよねとなんだかすごくすんなりと納得してしまって、素直な気持ちで首を縦に振っている私がいました。
当たり前の経験が仕事になる
箱根で働くようになり、ここは全国から多くの人を引き寄せる特別な場所なんだということに改めて気付かされました。案内所にいると、毎日たくさんの初対面の方と話します。
私はそれがまったく苦にならず、というか特に意識はしていなかったのですが、ある時「野沢さんは誰とでも感じ良く話すよね。なかなかできることじゃないよ」と褒めてもらえました。
思えば子どもの頃から、学校帰りに観光の方に声をかけられて道案内するといったことは日常茶飯事。自分の強みや適性がわからず悩んだこともありましたが「箱根で生まれ育った」という経験そのものが仕事に役立つなんて、意外ですが嬉しく思います。
勤め始めた頃は箱根の代表的な観光地を案内するものだと思っていましたが、観光客の方から「地元の人はどういうところに行くの?」と聞かれることが多いと気付きました。そこで私が「学校の遠足では金時山に登りました」「芦ノ湖で海賊船にも乗りましたよ」と話すと「そんな場所があるんだね、面白そう!」と盛り上がっていただけるんです。
自分が当たり前に経験してきたことをそのままお客様に伝えて喜ばれる、そんな仕事はなかなかないのではないかなと、ここで働く楽しさを日々実感しています。
多様な「働く喜び」がある町
思わぬきっかけで働き始めましたが、気付けば10年。少しずつお客様の多様な投げかけにも対応できるようになってきました。「テレビで見たアレが食べたいんだけど、何だっけ」「思いつきで来たのだけど、おすすめ教えて」といったリクエストに、時には自分の記憶を引っ張り出し、時にはお客様のお好みを探るために対話を重ね、最終的に「そうそう、それそれ!」と言っていただけた時は、私もちょっと良い気分になります。
観光地である箱根で働くというと接客業のイメージが強いかもしれませんが、調理や清掃、企画や管理といった裏方の仕事も実はたくさんあります。
華やかな表舞台に出たい人も、陰で支えるのが得意な人も、それぞれの持ち場で輝けるのが箱根の魅力。私自身もこの観光案内所という場所でこれからもお客様の笑顔をつくっていけるよう、案内所のスタッフとして、そして「箱根で暮らすひとりの人」として、自分の中の情報や感性をアップデートし続けていきたいです。