今回は、6月1日から30日まで予定している「カエルとカタツムリ」展にちなんだ記事をお届けします。
タゴガエルは、学名・和名とも、両生類学者の田子勝弥氏に献名されたものです。他のカエルに比べると知名度は低いのですが、箱根山地ではよく目にする体長4~5センチのアカガエルです。
高い場所では、神山の山頂近くから、湧水があれば、標高200m付近までみられます。標高780mにある森のふれあい館でも、ドアを開けておくと入ってくることがあります。
産卵は、沢の石の下や、湧き水がしみ出る土穴で行われ、グー・グーという声はするのですが、姿はなかなかみつかりません。卵は直径3ミリほどで、日本カエル図鑑では、産卵数が30~160個となっています。しかし、箱根山地で調べたところでは、これよりもかなり多く、平均が約160個といったところです。
面白いのは、ふ化したおたまじゃくしに餌を与えず、水だけ交換するだけでも小さなカエルになれることです。試しに一腹の卵塊からふ化した幼生を餌を与えたグループと与えないグループに分けて見たところ、与えたグループは与えないグループより3割ほど体重が重く、動きも活発でした。無給餌グループの子ガエルの大きさは体長7ミリ、体重33ミリグラムと小型でしたが、変態の時期は同じでした。餌の少ない小さな水源でも繁殖できるのが、このカエルの強みです。
外輪山の稜線に近い湧水でも、体長7ミリほどの幼体を見ましたが、この個体は、ほぼ卵だけの栄養でカエルになったようです。
-1 タゴガエルの卵塊(発生進む)
-2タゴガエルの幼体(変態直後)
-3タゴガエル人工産卵・左が♂
2020.5.7 石原龍雄