寄木細工とは
寄木細工とは
日本屈指の樹種を誇る箱根山系。
様々な樹木が持つ自然の色を活かし、それぞれ集めて精緻な幾何学模様を作り出す技術、それが箱根寄木細工です。
寄木細工とは、その名の通り「木を寄せ集めて」つくる工芸品のこと。
様々な木の色合いや風合いを組み合わせて模様を作り出した種板(たねいた)をベースに、かんなで薄く削って(0.15~0.2mm)シート状にしたものを小箱などに化粧材として貼っていく「ヅク貼り」と、種板そのものをろくろでくり抜いて加工する「ムクづくり」が箱根寄木細工の特徴です。
ムクづくりから生成された作品を「ムクもの」と呼び、ヅク貼りから生成された作品を「ヅクもの」と呼ばれています。
一片一片の木片を作るためには木を切り出す角度や寸法の正確性、接着技術、そしてそれらを生み出す工具の製作に至るまで長い年月の経験と熟練が必要です。
色彩と木目
以前は箱根山系の木材を使用していましたが、国立公園になったことで伐採することができなくなり現在はほとんど使用していません。 その代わり70%を誇る山国の日本、様々な地域から木材を購入しています。外国からの輸入材を購入することもあります。
それぞれの木材が異なる色彩と木目を現していることで、様々な木材が持つ色彩で色味を表現しています。
白色系 | みずき、あおはだ、もちのき、しなのき |
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黒色系 | かつら神代、くり神代、マンソニア |
灰色系 | ほおのき、はおはだのしみ、さんしょうばら |
茶色系 | えんじゅ、あかくす、いちい、くわ、くすのき |
赤色系 | レンガス、ハドゥク |
黄色系 | しなのき、にがき、うるし、くわ |
緑色系 | はりえんじゅ、ほうのき |
褐色系 | マンソニア、ウォールナット |
淡黄系 | まゆみ、にがき |
模様と色味
種板は基礎材と呼ばれる材料となる木を型に入れて切り、模様の部材を作ります。 同じ形の部材を貼り合わせることで模様の基礎となる小さな寄木のブロックをつくり、その小さなブロックをさらに貼り合わせてできるのが種板になります。
そこから生み出される伝統模様は約60種類。色や配置を変えると100種類にも200種類にもなると言われています。 「六角麻の葉」や「紗綾型(さやがた)」「青海波(せいがいは) 」「七宝矢羽(しっぽうやばね)」「鱗文様(うろこもんよう)」などが代表的な文様となります。
箱根細工の製品・種類
箱根細工には「挽物」(ひきもの)と「指物」(さしもの)のがあります。
「挽物」はろくろを使用して作られる品物で、盆、椀、丸膳などがあり、明治以後は多くの玩具類も製作されています。
「指物」は主に箱類で、その表面を「寄木細工」や「象嵌(ぞうがん)細工」で装飾します。
箱根細工ができるまで
ヅク技法
様々な木の色合いを組み合わせて幾何学模様を作り出した種板(たねいた)をベースに特殊なカンナで薄く削り、0.15~0.2mmのシート状にする技法。
これを小箱などに化粧材として貼っていく。
この技術が箱根寄木細工の原点。
ムク技法
様々な木の色合いや風合いを組み合わせて模様を作り出した種板(たねいた)を、厚いまま加工する技法。
種板(たねいた)を板状に切って組み合わせた葉書入れ・文庫等や、ろくろで削り出した菓子器類・お盆類・茶筒・ぐい呑み等がある。
箱根駅伝の往路優勝トロフィーもこの技法で作られる。
木象嵌
異なる色の天然木材を使い、絵画・風景・人物などの木画を「象(かたど)り嵌(は)める」技法。主な技法は大きく以下に分けられる。
一枚ずつ糸鋸ミシンで描いてから嵌める「挽き抜き象嵌」
二枚同時に糸鋸ミシンで描いて嵌める「重ね式象嵌」